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ナレッジ活用が企業に与える効果とは? 活用方法と成功事例を紹介

更新日: 2023年1月20日

社員が業務を通じて得るナレッジは、企業にとって目に見えない重要な資産です。しかし目に見えないだけに、意識しないとそれらの資産の組織全体での活用は極めて困難です。そのため、社員のナレッジを組織で共有して十分に活用できている企業は多くありません。

ナレッジを組織全体で活用すると、業務効率化や社員の育成・教育、顧客満足度向上など幅広い分野で経営に大きな効果を与えられます。ここでは、ナレッジを活用する効果、有効に活用する方法、およびナレッジを活用して成功した企業の事例について解説します。

組織全体で活用するために必要なナレッジの共有ついては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

ナレッジ共有とは? 最適なツールを選ぶ際のポイントやメリット

ナレッジの活用効果

社内のナレッジを組織全体で活用したときに得られる効果は、広範囲にわたります。主な効果について紹介します。

  1. 業務効率・生産性の向上

    業務経験の長い社員は、それぞれの分野における高度でプロフェシャナルな知識や業務を効率的に処理できる手順など優れたナレッジを持っています。それらのナレッジを共有できると社員のスキルアップができ、組織全体の業務処理能力を底上げできます。
    その結果、経験不足などによる知識のなさや手順の悪さによって生じる時間のムダを防止でき、業務効率や生産性を向上できます。

  2. 顧客満足度の向上

    多様な問い合わせが来るサポートセンターやコールセンターで顧客対応のナレッジの蓄積・共有ができていると、迅速で的確な対応が可能になります。問い合わせ対応におけるスピードと正確性は、顧客満足度の向上の最も重要なファクターです。
    さらに、ナレッジをFAQとして公開すると、顧客の自己解決力を高められます。顧客は面倒な問い合わせをしなくてもよくなるため、顧客満足度が向上します。

  3. 社員育成・教育の負担軽減

    社員の質を高めるには継続した教育が必要ですが、必要なナレッジがマニュアルや事例として蓄積されていると、教育の時間や労力をかけずに社員の能力アップを実現できます。
    業務に必要な知識やスキルをすべて教育することは、現実としては不可能です。ナレッジを活用することでOJTやOff-JTを補完し、教える負担と時間、コストを軽減した効率的な社員教育ができます。

  4. ナレッジのブラックボックス化・属人化の防止

    ナレッジマネジメントを推進すると、特定の社員しか持っていないブラックボックス化されたナレッジも共有化できます。質の高い有益なナレッジを組織全体で活用できると、業務対応力が大幅に向上するほか、業務の固定化を回避できて不正行為の防止にもなります。

  5. 組織力の強化

    ナレッジ共有が可能になると、組織内だけにとどまらず組織間でも業務の連携を強化できます。ナレッジ共有を契機に部門間でのコミュニケーションが密になって、相互理解が進展したり共通認識が深まったりして連携した業務ができるようになり、組織力が高まります。

  6. 企業の持続可能性を高める

    経営に重要なナレッジを持った人材が急に離職しても、ナレッジが蓄積されていると、業務の質の低下、対応時間のロス、業務中断のリスクを防止できます。また、企業の存続を脅かすような非常事態の発生時にも、企業の持続可能性を高められます。
    例えば、突発的な災害、サイバー攻撃などへの対応策がナレッジとして共有できていると、迅速なリスク対応やリスクの拡大防止が可能です。

  7. 新しいナレッジや高次元なナレッジの創造

    「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあります。ナレッジも、複数を組み合わせることで新しい画期的なナレッジや高度なナレッジを生み出せる可能性があります。逆に、ナレッジの共有・活用ができなければ業務が停滞し、経営に新風を送り込めるチャンスが低下します。

ナレッジの活用方法


ナレッジは、収集後に「可視化・データ化」「蓄積・更新」「一元管理・共有」が必要です。これらをできるようにするには、「活用の推進者、運営者、運営方法などの設定」「活用目的の明確化と目的にあったナレッジの範囲の設定」「目的に合ったナレッジ活用のためのツールの選定・導入」が必要です。

ナレッジ活用基盤の構築

ナレッジ活用のためには、収集後に「可視化・データ化」「蓄積・更新」「一元管理・共有」ができる基盤の構築が必要です。
「可視化・データ」では、文章、図表、イラストなどを駆使して分かりやすく、かつ、できるだけ標準化してデータ化し、システム的に管理できるように考慮します。

「蓄積・更新」では、ナレッジを単純に蓄積するのではなく、検索しやすいように検討します。例えば、ナレッジをカテゴリーで分類したり、階層構造を持たせたりすると、あいまいな情報でも検索しやすくなり、関連したナレッジの参照もしやすくなります。カテゴリーとしては、顧客対応情報、技術・営業などの専門情報、成功事例などが考えられます。また、ナレッジの更新については運用ルールを定め、新しいナレッジの登録や古くて役に立たないナレッジの削除などが迅速にできる仕組みが必要です。

「一元管理・共有」では、利用しやすいようにナレッジが1カ所に一元管理されていなければなりません。なお、一元管理では1カ所で管理されているだけでなく、全社員にナレッジに対するアクセス性、検索性、利便性などが保証されていることが必要です。

ナレッジ活用の促進のために必要なこと

ナレッジマネジメントの成功にはツールが不可欠ですが、ツールに加えてナレッジ活用を推進するマネージャーや担当者によるマネジメントの努力がないと成功できません。目的に合ったツールの選定・導入後は、ナレッジ活用の推進者の設置、運営方法の設定、活用目的の明確化などをきちんと行い、熱意を持って推進しないと成功できません。

ナレッジがブラックボックス化・属人化する理由と対策


ナレッジの活用がうまくいかない大きな理由のひとつに、ナレッジの属人化があります。なぜ組織内のナレッジが属人化するのか、その理由と対策方法について理解が必要です。

ナレッジが属人化する理由

ナレッジが属人化する理由には、組織上の問題と個々の社員の問題があります。両者は個別の問題ではなく表裏一体です。個々の社員の問題を、組織やマネージャーなどによる人的マネジメントで解決しなければなりません。

  • 組織上の問題

    ナレッジ活用の重要性を社内に浸透させられていない
    ナレッジの蓄積には社員にも負荷がかかるため、ナレッジ活用の重要性が理解されていないと蓄積されません。
    ナレッジ蓄積のための仕組みが確立されていない
    蓄積しやすい仕組みが構築されていないと、日常業務で忙しい、時間がかかって面倒などの理由で蓄積が進みません。
    ナレッジ提供のための社員への評価システムがない
    自分のナレッジをわざわざほかの社員に教えたくないという理由で、ナレッジが属人化されることがあります。ナレッジを積極的に蓄積すると人事評価が良くなるシステムの準備や、それを評価できるマネージャーを育成しないと属人化を完全には防止できません。
  • 個々の社員の問題

    社員に以下のような問題があると、ナレッジの蓄積が進みません。マネージャーやナレッジマネジメント推進者は、このことを理解して対応策を考えなければなりません。

    自分の問題としてとらえていない
    自身の持つナレッジに対して積極的に共有するほどでもないと考えたり、自分にはナレッジ蓄積は関係がないと考えたりする社員は一定数存在しています。また、ナレッジの活用が自身の業務に役立つと思わないために、ナレッジ共有の取り組みに関心を持たない社員もいます。
    ナレッジの提供に意味を感じない
    ナレッジを提供しても評価につながらない、逆に損をする、あるいは現在の仕事上の地位を守りたいと考えて、積極的にナレッジ共有に取り組まない社員もいます。

ナレッジを属人化させない対策

ナレッジを属人化させないための具体的な対策を解説します。

  1. 業務フローを見直し、業務の分散化・標準化とマニュアル化の推進

    特定の社員に業務が集中すると、属人化が進展します。業務フローを見直して業務をできるだけシンプルにし、業務の分散を図って集中をできるだけ回避すると、ナレッジの属人化を防止できます。また、業務の標準化やマニュアル化を促進することで、ナレッジが自然に共有化されていきます。

  2. 複数人による業務権限・責任の分散化

    業務を特定の社員のみが担当しないようにします。さらに複数の社員に業務の権限・責任を分散させると、特定の社員がひとりでは業務が完結できないため、より確実に属人化を防止できます。

  3. ナレッジマネジメントツールの導入

    ナレッジマネジメントツールを導入し、同時に運用ルールや評価制度を確立すると、ナレッジの蓄積・共有・活用がしやすくなります。その結果、ナレッジを自分だけのものにしないで共有する文化ができ上がれば、ナレッジの属人化は自然に解消されていきます。

ナレッジマネジメントツール完全ガイド

ナレッジ活用の成功事例

Zendeskは世界10万社以上が利用するカスタマーサービスプラットフォームで、ナレッジの共有を効果的に支援します。Zendeskを利用してナレッジの属人化を防止し、ナレッジを活用した事例をご紹介します。

Zendeskのナレッジベース記事作成イメージ

アライドアーキテクツ株式会社「属人化した問い合わせ対応を標準化し、顧客満足度向上に貢献」

アライドアーキテクツ株式会社は、SaaSツールとデジタル人材によるソリューションを提供するマーケティングDX支援企業です。同社は、問い合わせ対応のナレッジの属人化でサポートの質にばらつきが生じるという課題を抱えていました。

しかし、課題を解決したくても問い合わせが電話、メール、問い合わせフォームなどに分散していたため、内容の確実な把握が難しく改善へのアクションにつなげられていませんでした。その結果、顧客への回答が統一できていない、顧客が自己解決できるツールの不備が顧客のストレスを高めるなど、顧客満足度の低下を招きかねない状況でした。

そこで、ナレッジの属人化の防止、顧客満足度の向上を目的にZendeskを導入しました。導入後、Zendeskでプロダクトごとに個別のFAQサイトを構築し、問題解決につながるFAQ記事に顧客を誘導することで自己解決を促進して問い合わせ数の削減を実現しました。

さらに、定型文の呼び出しができるマクロ機能やサポート担当者が問い合わせ対応画面からFAQサイトの記事をそのまま検索・閲覧できるナレッジキャプチャアプリを活用することで、回答時間の短縮や業務の属人化からの脱却にも成功しました。そのほか顧客対応の質の均一化、およびノウハウの共有による引き継ぎや、業務に慣れるまでの工数の削減など、Zendeskを通じてナレッジを大いに活用しています。

【Zendesk導入事例】
アライドアーキテクツ株式会社

株式会社ディー・エヌ・エー「顧客の自己解決向上・ナレッジの一元化で活用の幅が拡大」

株式会社ディー・エヌ・エーは多彩なインターネットサービスを提供する企業です。同社は社員を支援する社内ヘルプデスクを立ち上げました。しかし、ナレッジを一元的に蓄積できる場所がなく、対応のバラつきやナレッジの属人化など、サポート業務の効率と質の両面に課題が残っていました。特にメールベースの問い合わせ対応にかなりの負荷がかかっていたことから、Zendeskを採用し課題の解決を図ります。

Zendesk導入後は、問い合わせ管理をZendeskに一元化。また、ヘルプセンター・FAQ構築機能を用いてFAQを充実させ、困ったときはまずはFAQを開き、自己解決できないときに問い合わせをするという流れが社員に定着しつつあります。

この結果、導入前は週次約250件だった問い合わせ数が約200件に減少し、全体の負荷の軽減に成功します。コロナ禍によるヘルプデスクの無人化や入社直後から在宅勤務が続いている社員が多いことなどから、ナレッジの活用は、同社にとって今後も重要な役割を担います。

【Zendesk導入事例】
株式会社ディー・エヌ・エー

ナレッジを業務に生かせる仕組みづくりが重要

企業が成長・発展していくことにより、業務の内容や運用方法が複雑化していくことは避けられません。こうした状況下において業務効率化や顧客満足度の向上に効果的な手法は、ナレッジマネジメントの推進です。

個々の社員に潜在するナレッジを蓄積・共有して全社員が有効に活用できるようにすることは、円滑な事業運営や事業拡大に大きく貢献します。今後、ますます重要になる経営力強化のためには、積極的に個々の社員のナレッジを引き出し、組織全体で活用していくことが求められています。

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