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チャーンレート(解約率)とは?計算方法と改善のための5ステップを解説

チャーンレート(解約率)は、事業拡大を目指す企業にとって重要な指標です。この記事では、その計算方法と改善のための施策を解説します。

Mozhdeh Rastegar-Panah

製品マーケティング担当シニアディレクター

金属製の球体からシダが生え、その隣に円形のリング構造が配置されている

チャーンレートとは

チャーンレート(解約率)とは、一定期間内に自社との取引を停止した顧客の割合です。この指標は、年単位、月単位、週単位、日単位など、さまざまな期間で評価できます。

顧客は最高のサービスを求めており、それが得られなければ他社へ乗り換える可能性があります。ZendeskのCXトレンドレポート2026年版によると、消費者の72%はたった一度の悪いサービス体験で競合他社に乗り換えると回答しています。質の低いカスタマーサービス、期待に応えられない対応、パーソナライゼーションの欠如——こうした要因がすべて顧客の解約につながります。

チャーンレートは、企業の課題を浮き彫りにし、改善すべき領域を明らかにする重要な指標です。この記事では、チャーンレートの基本から、その計算・改善方法、そしてCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)への影響について解説します。

目次

チャーンレートを理解する重要性

チャーンレートが重要な理由は明確です。顧客を失うことは収益の損失を意味し、チャーンレートが高いほど企業の収益に深刻な影響を及ぼします。

顧客の解約は、製品から収益、顧客満足度やロイヤルティに至るまで、企業のあらゆる側面に影響を与えます。この重要な指標を正しく理解することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 顧客維持率の向上:チャーンレートを下げることは、多くの場合顧客維持率の向上に直結します。顧客維持率が上がれば、収益性が高まり、顧客との長期的な関係構築が可能になります。
  • 顧客へのアプローチの強化:チャーンレートを活用すれば、アプローチキャンペーンの効果を評価し、メッセージがターゲット層に届いているかを判断できます。エンゲージメントの低下やチャーンレートの上昇は、キャンペーン戦略の見直しが必要なサインかもしれません。
  • 製品の改善:新機能をリリースした際にチャーンレートを観察すれば、顧客がその変更をどう受け止めているかがわかります。チャーンレートが低いほど、新機能が好評である可能性が高いといえるでしょう。
  • コスト削減:新規顧客の獲得には、既存顧客の維持よりも高いコストがかかることは周知の事実です。つまり、顧客を失った企業は、その顧客からの収益を失うだけでなく、新規顧客を獲得するためのコストも負担しなければなりません。

チャーンレートを正確に把握することが、顧客基盤の理解、ビジネスの改善、そして長期的な顧客関係の構築への第一歩となります。

チャーンレート、収益チャーンレート、成長率の違い

組織のチャーン状況を評価する際には、いくつかの用語を区別して理解する必要があります。

  • チャーンレート:失った顧客の割合
  • 収益チャーンレート:失った収益の割合
  • 成長率:一定期間内に新たに取引を開始した顧客の割合

これらの指標は企業にとって異なる意味を持つため、その違いを明確に理解することが重要です。たとえば、A社は月額500円の顧客を2人失い、B社は月額10,000円の顧客を1人失ったとします。チャーンレートはA社の方が高くなりますが、収益チャーンレートはB社の方が高くなります。

チャーンレートが「失った顧客数」を測定するのに対し、成長率は「獲得した顧客数」を測定する指標です。これら3つの指標は企業の持続的成長に影響を与え、顧客満足度の測定にも役立ちます。

チャーンレートの計算方法:4つの計算式

チャーンレートの計算は、CXと顧客維持率を向上させるための第一歩です。ビジネスの性質によって使用する計算式は異なりますが、ここでは最も一般的な4つの方法を紹介します。

1. チャーンレート(顧客ベース)

チャーンレートの計算式を示した図

チャーンレートは、シンプルながらも重要なCXに関するKPIです。年、月、日など、あらゆる期間でチャーンを分析する際に活用できます。

具体例として、1月のチャーンレートを計算してみます。月初に100人の顧客がいて、月末には90人になったとします。まず、100から90を引いて10を得ます。次に、10を100で割って0.1を算出し、それに100を掛けます。したがって、1月の月間チャーンレートは10%となります。

計算例:チャーンレート=(100人-90人)÷ 100人 × 100 = 10%

2. 総収益チャーンレート

総収益チャーンレートの計算式を示した図

チャーンレートでは解約した顧客数はわかりますが、すべての顧客が同等の収益をもたらすわけではありません。顧客によって支出額は異なるため、総収益チャーンレートを用いることで、顧客の解約が利益に与える影響をより詳細に把握できます。この指標は、サブスクリプションモデルを採用し、月次経常収益(MRR)を重視するSaaS企業などに特に有効です。

別の例として、9月の収益チャーンレートを計算してみます。事業のMRRが1,000万円で、9月中に50万円の損失があったとします。まず、50万円を1,000万円で割って0.05を算出し、それに100を掛けます。したがって、9月の総収益チャーンレートは5%となります。

計算例:総収益チャーンレート= 50万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 5%

3. 調整後チャーンレート

調整後チャーンレートの計算式を示した図

事業が急成長している場合、チャーンの実態を正確に把握するには、より複雑な計算式が必要になります。たとえば、事業拡大中の企業では、同じ期間内に新規顧客の大幅な増加と顧客の解約が同時に発生することがあります。この場合、顧客の総数が増加する可能性があり、解約した顧客のみを考慮した計算式では実態を正確に把握できません。

調整後チャーンレートの計算式を使用すれば、成長中の企業でも単純なチャーンレートより的確に顧客の健全性を評価できます。これにより、より適切で包括的なCX戦略の策定が可能になります。

計算例:調整後チャーンレートは、期間中の新規獲得顧客を考慮に入れ、成長企業の実態に即したチャーン評価を可能にする。

4. 季節的チャーンレート

季節的チャーンレートの計算式を示した図

多くの企業には、1年を通して繁閑の波があります。たとえば、プールは夏場に繁盛し、スケートリンクは冬場に賑わいます。まず、チャーンレートの計算式を使って繁忙期と閑散期のチャーンレートを算出します。その数値を季節的チャーンレートの計算式に当てはめれば、年間チャーンを求められます。

計算例:季節的チャーンレートは、繁忙期と閑散期のチャーンレートを組み合わせて年間の実態を算出する。

業界別チャーンレートの目安と事例

チャーンレートは、ビジネスや業界によって大きく異なります。ここでは、この指標がさまざまな組織にどのような影響を与えるか、業界別の目安と事例を紹介します。

Eコマースのチャーンレート目安

Eコマース企業の平均チャーンレートは、70〜80%に達することもあります。消費者にとって選択肢が豊富なこの業界では、長期的な関係を構築するために顧客ロイヤルティを最優先する必要があります。もちろん、この数値はビジネス戦略によって上下します。たとえば、Wayfairは2020年に65.5%の顧客維持率を記録しており、これはチャーンレートが34.5%だったことを意味します。

SaaSのチャーンレート目安

SaaSビジネスモデルはサブスクリプションに依存することが多く、チャーンレートは成功を左右する重要な要素です。SaaS業界における総収益チャーンの中央値は14%であり、SaaS企業はこの数値を下回ることを目指すべきでしょう。たとえば、ストリーミング大手のNetflixは従来低いチャーンレートを維持してきましたが、価格改定後に解約が増加しました。2022年3月時点での月間チャーンレートは3.3%でした。

物流業界のチャーンレート目安

物流業界の企業は、日々の業務と顧客維持の両面で不安定な状況に直面しています。物流業界の平均チャーンレートは40%であり、この業界の企業はリピート注文を確保するために顧客との関係構築に注力する必要があります。

チャーンレートを改善する5つのステップ

チャーンレートを把握することは重要な第一歩ですが、それを最小限に抑える方法を知ることも同様に重要です。ここでは、チャーンレートを下げてビジネスを成長させる5つのステップを紹介します。

チャーンレートを改善する方法を箇条書きで示した図

1. 顧客第一の考え方を取り入れる

解約する顧客の数を減らすには、顧客満足度を維持する方法を理解する必要があります。そのための最も効果的なアプローチの一つが、顧客第一の考え方を取り入れることです。

顧客第一の企業とは、製品や利益ではなく、顧客を組織の意思決定の中心に据える企業を指します。このアプローチを実践するには、顧客ニーズに焦点を当てて製品やサービスをパーソナライズし、問題に先回りして対処し、顧客の期待を理解することに注力すべきです。

2. 解約リスクの高い顧客の兆候を特定する

顧客の解約を防ぐもう一つの方法は、解約する可能性の高い顧客を事前に把握することです。解約リスクの高い顧客が一目でわかる目印はありませんが、そうした顧客を特定するために活用できる戦略的な指標やパターンは存在します。

注目すべきリスク要因には、以下のようなものがあります。

  • 企業とのコミュニケーションややり取りの減少

  • 否定的なレビュー

  • 商品の返品・返金の繰り返し

  • カスタマーサポートの対応に対する不満

  • 顧客エンゲージメント指標の低下

自社特有の兆候が他にも存在する可能性があるため、解約リスクの高い顧客をチームが特定できる仕組みを構築することが重要です。解約リスクの高い顧客を特定できたら、特別なオファーや強化されたサポートでアプローチし、ロイヤルティの回復を図ることができます。

3. 顧客ロイヤルティを優先する

顧客の解約対策において重要なもう一つの戦術が、顧客ロイヤルティの優先です。優れたカスタマーサービスの提供、CXのパーソナライゼーション、情緒的なつながりの醸成など、さまざまな方法で顧客との関係構築を促進できます。

こうした水面下での施策も重要ですが、より顧客に見える形での効果的な戦略として、ロイヤルティプログラムの導入があります。ロイヤルティプログラムは、購入、レビュー投稿、友人や家族への紹介などに対して顧客に特典を提供するもので、リピート購入や長期的な関係維持を促す効果があります。

4. 優良顧客を大切にする

最も効果的な戦略を採用したとしても、チャーンレートをゼロにすることはほぼ不可能です。だからこそ、優良顧客を特定し、大切にすることが極めて重要になります。

ロイヤルティ割引、特別価格、その他の顧客維持戦略を通じて、優良顧客に特典を提供します。さらに、多様な製品を提供している場合は、特にロイヤルティの高い顧客に対してクロスセルアップセルを行い、顧客生涯価値(CLV)を高めることを検討してください。CLVが高いほど、顧客の解約が収益に与える影響を抑えられます。

5. CXに投資する

ZendeskのCXトレンドレポート2026年版によると、CXリーダーの81%が「初回問い合わせで問題を解決できないブランドからは顧客が離れる」と回答しています。これほど大きなリスクを伴う以上、企業はカスタマーサービスやサポートの質を落とす余裕はありません。

優れたCXと迅速でパーソナライズされたサービスを提供するには、ヘルプデスクソフトウェア顧客関係管理(CRM)ソフトウェア、そしてCX向上を目的とした同様のツールへの投資が不可欠です。こうしたプラットフォームを活用すれば、サポート担当者は包括的かつプロアクティブなサポートを継続的に提供できるようになります。

チャーンレートの追跡方法

ここまで、チャーンレートの重要性と、その計算・改善方法について解説してきました。しかし、チャーンレートを徹底的に下げるには、継続的に追跡する仕組みが必要です。以下の手順に沿って、自社に適した追跡体制を構築してください。

  • ステップ1:期間を設定する
    特定の期間(月次・四半期・年次)でチャーンレートを監視するのか、時間の経過に伴うチャーンレートを追跡するローリング計算を行うのかを決定します。多くの企業では、月次チャーンレートを基本としつつ、四半期ごとにトレンドを分析する方法が有効です。
  • ステップ2:自社にとってのチャーンを定義する
    最も重要なチャーンの種類を選択します。顧客数ベースの標準チャーン、収益ベースの総収益チャーン、成長を考慮した調整済みチャーン、またはこれらの組み合わせのいずれかになるでしょう。SaaS企業であれば収益チャーンを重視し、Eコマースであれば顧客チャーンを優先するなど、ビジネスモデルに応じた選択が求められます。
  • ステップ3:パフォーマンスを追跡する
    CXソフトウェアなどのツールを活用して、顧客からのフィードバック、チャーンレート、その他の顧客維持指標を追跡します。ダッシュボードを設定し、チームがリアルタイムでデータを確認できる環境を整えることが重要です。
  • ステップ4:確認と改善を繰り返す
    短期・長期のパフォーマンスを追跡し、改善が必要な領域を特定します。たとえば、顧客満足度スコア(CSAT)の低下に伴いチャーンレートが上昇している場合は、カスタマーサポート体制の見直しが必要な可能性があります。定期的なレビュー会議を設け、データに基づいた改善アクションを実行してください。

これらのステップを実行し、必要に応じて繰り返すことで、企業はチャーンレートを包括的に把握し、顧客維持率を高めるための的確な対策を講じることができます。

よくある質問

Zendeskでチャーンレートを改善

高いチャーンレートは、放置すればビジネスの衰退につながりかねません。チャーンレートを最小限に抑えるには、顧客第一の考え方を取り入れ、顧客ロイヤルティを優先し、解約リスクの高い顧客を特定する必要があります。そして、チャーンレートを下げる最も効果的な方法の一つが、CXへの注力です。

Zendeskは、あらゆる規模の企業が顧客を理解し、満足させるための包括的なCXソリューションを提供しており、チャーンレートの低下と長期的なロイヤルティの向上に貢献します。チャーンレートを下げ、顧客関係を構築するために、ぜひ無料トライアルをお試しください。

Mozhdeh Rastegar-Panah

製品マーケティング担当シニアディレクター

Mozhdeh Rastegar-Panahは、Zendeskの製品マーケティング担当シニアディレクターであり、CX領域で豊富な実績を持つリーダーです。12年以上にわたりカスタマーサービスのイノベーション最前線で活躍し、AIやCXテクノロジーをグローバル企業向けの効果的かつスケーラブルなソリューションへと落とし込むことを専門としています。メッセージング、自動化、オムニチャネル戦略を通じたカスタマーサポートの高度化に注力しており、戦略的なビジョンと実践的な専門知識を兼ね備え、カスタマーサービスの未来を切り拓いています。

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