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効果的なカスタマーサクセスプランの作成方法とテンプレート

カスタマーサクセスプランのデータを活用した戦略と業務プロセスを導入し、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供しましょう。

Hannah Wren

スタッフ執筆

芝生の上でリラックスする、本と携帯を持つ男女のイメージ

顧客の成功こそが企業のビジネスを左右する鍵である。これは単なる理想論ではなく、実際に、顧客が望む成果を実現するための支援を戦略的かつ継続的に行うことで、企業としても長期的な成長と利益の拡大が見込めるということです。

カスタマーサクセスは、以下の4つの基盤によって成り立っています。顧客との信頼関係の強化、顧客中心の思考、あらゆる接点における価値の最大化、そして顧客の声を企業内で代弁する姿勢です。これらを継続的かつ統合的に実践するには、明確で実行可能な「カスタマーサクセスプラン」の策定が不可欠です。

カスタマーサクセスプランは、顧客満足度の向上顧客維持率の改善にとどまらず、収益の拡大、ブランド支持者の育成、そして顧客生涯価値(CLV)の最大化にも大きく貢献します。この記事では、カスタマーサクセスプランの作成方法とベストプラクティスついて解説します。

カスタマーサクセスプランとは

カスタマーサクセスプランとは、顧客の長期的な成果と満足を支援するための戦略設計書です。企業の提供価値と顧客ニーズの接点を明確にし、成果につながるアクションや指標、体制、リソース配分などを体系化します。これにより、カスタマーサクセスチームの活動が一貫し、部門横断での実行が可能となります。

カスタマーサクセスプランの目的とは

カスタマーサクセスプランの目的は、顧客の目標と成功に必要なアクションを特定し、企業が的確に支援できるようにすることです。その実現には、以下のような要素の検討が求められます。

  • ターゲット顧客の深掘り: 顧客のビジネスゴール、課題、知識ギャップ、カスタマージャーニーの位置づけなどを網羅的に把握する。
  • 成果に直結する提案の提示: 顧客に合わせた優先事項や推奨アクションを明示し、製品やサービスの価値が最大限発揮されるよう導く。

実際のカスタマーサクセスプランでは、顧客の目標とニーズに沿って、どのようなサービスや支援を、いつ・どのように提供するのか——その全体像を整理した内容になります。

「カスタマーサクセス」と「カスタマーサービス」の違いとは

一般的にカスタマーサクセスは、能動的かつ戦略的なアプローチで、顧客の成果実現を支援する活動です。一方、カスタマーサービスは、発生した課題や質問に応える反応的なアプローチ(サポート)です。

カスタマーサクセスとカスタマーサービスの違いを説明するグラフィック

カスタマーサクセスの特徴は次のとおりです

  • プロアクティブ: 潜在的な課題や機会を先読みし、先回りして顧客に価値を届ける。
  • 関係構築重視: 短期的な成果にとどまらず、顧客との長期的な信頼関係の構築に注力。
  • 成果ドリブン: 顧客が目標を達成できるよう、定量的な成果に焦点を当てた支援を実施。
  • 価値訴求型: 製品やサービスの導入効果やビジネスインパクトを明確に伝える。

一方、カスタマーサービスの特徴は次のとおりです。

  • リアクティブ: 顧客からの問い合わせに応じて対応を開始。
  • 問題解決: 特定の課題や問題の解消に集中。
  • 一時的なやり取り: 単発的な対応が中心で、関係性の深化は目的としないケースが多い。
  • 利用支援型: 製品やサービスの円滑な利用をサポート。

カスタマーサクセスプランが重要な理由

体系的なカスタマーサクセスプランを持つことで、企業はデータに基づいた判断と予測をもとに、長期にわたる顧客戦略を実行できます。具体的な導入メリットには、以下が挙げられます。

このように、単なるサポート強化ではなく、顧客との関係性を成長戦略に変換する仕組みとして機能するのが、カスタマーサクセスプランの本質です。

カスタマーサクセス戦略プランの要素

成果につながるカスタマーサクセスプランを構築するには、以下のような基本要素を押さえる必要があります。これらは業界やビジネスモデルにかかわらず、共通して有効な構成です。

  • 顧客プロフィール:ペルソナ、業種、課題、成功要因の特定

  • 目標とKPI:成果の定義と測定手段の明確化

  • マイルストーンとタッチポイント:重要な接点やアクションの設定

  • ジャーニーステージごとの施策とリソース配分

  • 営業活動の負荷とコンバージョン率を踏まえた戦略

  • 再現性のあるプロセスの体系化

  • 部門間のスムーズな引き継ぎ体制の整備

以上を網羅することで、どのような顧客接点でも一貫した体験と価値提供が可能になります。

カスタマーサクセスプランの作成方法

ここまでは、カスタマーサクセスプランの重要性と主な要素を解説しました。ここからは、戦略的なカスタマーサクセスプランを構築するためのステップを9段階に分けて解説していきます。

カスタマーサクセスプランの作成方法における9つのステップを説明するグラフィック

1. カスタマーサクセスチームの役割と責任を決定する

カスタマーサクセスプランを実践する前に、顧客中心主義の姿勢を共有するチームを形成する必要があります。 このチームスタッフは、カスタマーエクスペリエンスの強化と顧客の目標達成に向けたサポート提供のために一丸となって業務に取り組みます。

カスタマーサクセスチームを形成する際に、重要なポジションをいくつかご紹介します。

  • 最高顧客責任者: カスタマーサクセスのリーダーを採用します。カスタマーサービスチームを監督し、部門間のコラボレーションを促進し、収益アップのための戦略を統括し、インパクトのある製品アップデートを後押しするのがこのポジションの役割です。
  • カスタマーサクセス担当部長: カスタマーサクセスチームを牽引し、顧客の目標達成プログラムを起動し、戦略と使用するテクノロジーの提案を行い、ビジネス目標と顧客のニーズのバランスを保つのが役割です。
  • カスタマーサクセス責任者: 顧客と対話してニーズを理解し、販売と成功の機会を特定し、カスタマーサクセスのパフォーマンスを監視し、投資収益率(ROI)と解約削減のための戦略を作成するのが役割です。
  • カスタマーサクセスマネージャー: カスタマーサクセス担当者チームを管理し、重要な目標やマイルストーンについてチームを教育し、販売と成功の機会を見つけるために顧客データとフィードバックをレビューし、製品の定着とトレーニングを促進するのが役割です。
  • カスタマーサクセス担当者: 顧客へのアドバイスとトレーニングの提供、顧客との関係構築、リソースの提供、カスタマーサクセスマネージャーへの重要な顧客フィードバックの提供を行います。

すべてのポジションを揃えるための十分な予算がない場合は、戦略担当者や顧客対応の担当者など、ビジネスに最も必要な役割を判断し、それに応じて採用を決定してください。

2. カスタマージャーニーマップを作成する

カカスタマージャーニーマップは、顧客がどのようにブランドと関わりながら目標を達成していくか、その過程と主要な接点を可視化するツールです。カスタマージャーニーマップを活用することで、カスタマーサクセスチームは重要な接点(タッチポイント)を特定し、CXや売上の向上に直結する施策を計画的に設計できます。一般的なカスタマージャーニーは、以下の5つのステージで構成されます。

  • 認知

  • 検討

  • 転換

  • 定着

  • アドボカシー

まずはこの流れを把握し、それぞれのフェーズで顧客にとっての「成功」とは何かを定義していくことが重要です。

3. カスタマージャーニーの各段階における成功が何を指すか理解する

これまでカスタマーサクセスは、セールスプロセスの後工程と見なされがちでしたが、実際にはマーケティングやプロダクトなど複数部門と連携するクロスファンクショナルな業務です。カスタマーサクセスチームは、カスタマージャーニー全体を理解し、各ステージにおける「成功」とはどんなものなのか共通の知識を持っていることが大切です。

下記はそれぞれのステージでの成功の例です。

  • 転換: 顧客が購入後、スムーズにカスタマーサクセスチームへ引き継がれ、オンボーディングが円滑に進行している状態
  • 定着: 顧客が製品やサービスを継続利用し、契約更新を行う
  • アドボカシー: 顧客がポジティブな体験をもとに紹介・レビューを行い、NPS®や解約率の改善につながっている

こうした成功の定義をもとに、データを活用しながら次の施策を導き出していくことが、プラン策定の次のステップとなります。

4. データを使用してインパクトのある機会を特定する

カスタマーサクセスプランを作成するには、すべての部門からの正確なデータが必要です。 正しく実行すれば、ビジネスはインパクトのある顧客戦略とプロセスを特定し、全体的なエンゲージメントを高め、A/Bテスト(またはスプリットテスト)を行い、どの戦略が最も効果的なのかを判断できます。

重要なインサイトを取得し、インパクトのある機会を特定するために活用できるデータの例をご紹介します。

  • インタラクションの履歴とカスタマーエフォートスコア(CES)を活用し、特定の顧客がサポートを受けていると感じるにはどれだけの個人的な対応が必要なのかを特定します。
  • カスタマーサービスとエージェントパフォーマンスのデータを利用すると、自動化できる反復的なタスクやプロセスがあるのか判断するのに役立ちます。
  • 顧客からのフィードバックと過去のサポートリクエストは、どのトレーニングやサービスが顧客にとって最も有益であるかを理解するのに有効です。

このような機会を念頭に置きつつ、顧客の成功に不可欠なやり取りと、それらのプロセスを合理化、自動化、改善できる方法を検討していきましょう。

5. セールスジャーニーの重要な場面のプロセスをまとめる

ここでは、マーケティング、営業、サポートチームがCXを強化し、カスタマージャーニーの各ステージで顧客を成功に導く方法をいくつかご紹介します。

  • 認知: マーケティングチームが、ポジティブな第一印象を残し、製品が顧客にどのように役立つか情報を提供し、今後のやり取りの土台を築きます。
  • 検討: セールスチームが、サービス内容、製品の推奨、タッチポイントをカスタマイズします。
  • 転換: サクセスチームが新規顧客のオンボーディングを行い、製品の使用方法を示します。

  • 定着: カスタマーサクセスチームが、追加のトレーニングを提供し、製品の設定または実装を手伝い、製品を使い始められるようツールとガイダンスを提供し、サポートを行い、必要に応じてアップセルまたはクロスセルを実施します。
  • アドボカシー: カスタマーサクセスチームが顧客のフィードバックを集め、セールスと定着プロセスのレビューを行い、場合に応じて改善策を導入し、常に積極的に顧客との対話の機会を作ります。

6. カスタマーサクセス指標を追跡し、ベンチマークを設定する

カスタマーサクセスの取り組みのパフォーマンスを測定する方法を決定するために、メトリックの選択やベンチマークの設定を行います。そして、定期的にデータを分析します。 カスタマーサクセスチームが測定すべきメトリックスには以下のようなものがあります。

カスタマーサクセスプランのパフォーマンスを定期的にチェックして、以下の点を確認しましょう。

  • 戦略は、組織の目標に向かって効果的に作用しているか

  • チームや個人は各自の任務を理解し、効率的に共同作業をしているか

  • 引き継ぎとデータ共有のフレームワークが明確で、計画通りに機能しているか

7. 各ステージで成功を収められるよう、チーム間のコラボレーションを促進する

顧客が望む目標を達成できるよう、優れたカスタマーサクセス戦略は、さまざまな部門による協力体制のもと形成されます。 カスタマーサクセスにおけるコラボレーション業務の例をご紹介します。

  • 営業とマーケティングチームは、顧客のニーズを理解し、ターゲットとする客層にアピールするコンテンツを開発するために協力することができます。

  • サクセスチームは、営業チームからの情報を活用して、カスタマーエクスペリエンスをパーソナライズし、積極的に顧客のニーズに対応することができます。

  • カスタマーサービスは、カスタマーサクセスチームのやり取りの履歴メモを使用して、既に顧客がアクセスできるリソースを把握し、問題解決の最善策を決定することができます。

カスタマーサクセスプランの部門間コラボレーションのグラフィック

部門間のコラボレーションが顧客の成功到達に不可欠であるのと同時に、サポート担当者が高性能なソフトウェアにアクセスできることで業務の最適化が図れることも重要です。

8. 適切なツールをチームに提供する

カスタマーサクセスチームを編成する前に、カスタマーサポートツール顧客フィードバックソフトウェアに投資することが理想です。 チームがこれらのツールにアクセスできることで、担当者が顧客一人ひとりの全体像やエクスペリエンスを把握できるため、長期的なプランにも影響をもたらします。

CSMソフトウェアの主な機能には、顧客からのフィードバック、問題、リクエスト、期待、データの追跡が含まれます。 以下のような性能が備わっていることで、それが実現します。

9. 顧客のフィードバックを収集する

顧客のフィードバックを定期的に評価し、重要な発見事項をカスタマーサクセスプランに組み込みます。 フィードバックにより、データには含まれないコンテキストを入手することができるため、手探り状態で業務を行うことがなくなり、最もインパクトのある変更を決定する場合に憶測による判断を回避することができます。

企業は顧客のフィードバックを活用して、次の方法でカスタマーサクセスプランを改善できます。

  • 顧客が抱えている課題や問題点を特定する

  • さらなるサポートが必要な場面を把握する

  • オンラインのリソースを更新する

  • より質の高いトレーニングを提供する

  • 顧客のオンボーディングエクスペリエンスを改善する

  • メッセージを一人ひとりに合わせてカスタマイズする

要するに、顧客のフィードバックは、カスタマーサクセスプランのパフォーマンス、新しいツールの効果、全体的な顧客の感情を効果的に見極めるのに役立ちます。

カスタマーサクセスプランの例3選

カスタマーサクセスプランを構成するにはさまざまな方法がありますが、確実に前述の要素を組み込むようにしてください。

それでは、カスタマーサクセスプラン作成の際に役立つ例をご紹介します。

カスタマーサクセスプランのベストプラクティス

カスタマーサクセスプランの構成における基本を理解したところで、作成し運用するためのベストプラクティスについて解説します。

  1. 目標は、具体性、測定可能性、達成可能性、関連性があり、明確な期限(SMART)があることを確認する。

  2. 特定の顧客セグメント、セールスジャーニーの段階、顧客のニーズに関する戦略をデータを活用して作成する。
  3. 各タスクの責任者と成果を明確に定義する。

  4. 必須の反復タスクを特定し、自動化する。

  5. ハードセルに急がずに、顧客の信頼と関係構築で売上を増やす。
  6. データを共有し、他のチームと協力する。

  7. 今後のやり取りの指針となる明確な顧客体験設計(CDX)をまとめる。

プランが導くカスタマーサクセス

カスタマーサクセスの第一歩は、プランから始まります。 異なるシナリオや顧客セグメントへのアプローチをカスタマイズするだけでなく、チーム全体が計画に沿って一貫性のある優れた体験を顧客に提供する必要があります。

Zendeskでは、無料のカスタマーサクセスプランのテンプレートをご用意しております。テンプレートをダウンロードして、貴社の強固なカスタマーサクセスプラン作成にお役立てください。 さらに、Zendeskを活用し、あらゆるタッチポイントでポジティブな顧客体験を構築しましょう。

「ネットプロモーター」「ネットプロモータースコア」「NPS」は、NICE Satmetrix, Inc.、Bain & Company, Inc.、Fred Reichheldの商標です。

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